エデュケーション
やっと追いつめたぞ。
ここからは、僕が相手だ。
観念するんだな。
…許してくれ?
どんなに許しを乞うても、君が犯した罪は許されるものではないよ。
観念するんだ。
思い出してみろ。
君が犯した過ちを。
君は女性の部屋に忍び込み、慣れた手つきで手足を縛り上げてみせた。
寸分の狂いもない、洗練された動きでね。
恐れ入ったよ。
あんなもの見せられたら、居ても立ってもいられないよ。
…なぜ、そんなことがわかるのかって?
当たり前じゃないか。 覗きだよ。
彼女の部屋のガジュマル。
その幹を細工してカメラを仕込んである。
マイク付きのね。
あぁ、そうだ。
僕は…変態だ。
君は自分のことを棚に上げて言っているけど、君は僕より遥かに変態だ。
…どうしてって?
あんな中途半端で満足するなんて、そっちのほうがよっぽど変態だと思うけどね。
半端…そう、半端なんだ。 なにもかも。
…僕に言わせたら、そんなんじゃ全然ダメだ!
まだ他にやれることがあったろ?
なぜ君は手足だけ縛ったんだ!
猿ぐつわとか!
あの、なんか、鉄の格子みたいなやつとか!
もっとこう、ベルトっぽいやつとか!
君は枷という物を理解していない!
ビギナーにも程がある!
ビギナーだよ、初心者ってこと。
君はその中でも底辺中の底辺。 最下層。
…はぁ。
喋りすぎたな。 ご託はここまでだ。
…なぜ脱いでるのかって?
その意味がわからないのか?
だからビギナー止まりなんだ。
仮に僕をプロと仮定しよう。
プロであれば脱ぐ。 プロ意識ってやつだ。
それだけさ。
さぁ…こいよ三下!
格の違いを見せてやる。
君が彼女の部屋で自分の体を縛ったように、今ここで僕の体を縛り上げるんだ!
…できない? なぜ?
この僕が胸を貸してやると言っているんだ。
(縛らせようとしながら)
いいから…! そいつで…! ほら!
縛れよ!
なんでだよ!
なんで縛らないんだよ!
そんなに不満なのか、ええ?
そうか。
プロの道具を使いたいってか。
そういうことだな。
待ってろ…。
ほら! これならどうだ!
首枷だ。
僕はプロだからね。 常備してるんだ。
これをこうやって…!
ほら、心臓が高鳴ってきたろう?
お次はこれだ…手錠。
手錠と言っても、これは手首だけじゃない。
こうやって…!
ほら、足首にだってできるんだ!
さすがに重りは持ち歩いてないけどね。
もちろん、家には各種サイズを取り揃えてある。
勘違いしないでくれ。
プロだからね。
そしてもう一個ある。
あとは君に…。
(荷物の入ったバッグを相手の足元へ投げる)
これはこうやって…!
後ろ手にはめるんだ。
さぁ…準備は整った!
あとは君が、そのバッグからムチを取り僕をなぶるだけだ。
アドレナリンがギュンギュンしてるのがわかるだろう!
おい。 なぜスマホを取り出す?
撮影は厳禁だ!
あとで見返そうだなんて、みみっちい変態のすること。
プロであればナマを感じるんだ!
その場その時の感情でぶつかるんだ。
それがプロってやつさ。
警察だって?
呼んでもいいけど、それはちょっと考えた方がいいんじゃないかな。
もし警察を呼んだら…わかるよね?
君は確実に捕まるだろうし、僕もやばい。